合併について
『これだけの疑問』と題して
池上 洋道先生 の講演会がありました。 自治体問題研究所 主任研究員
千葉大学教育学部 非常勤講師
住民有志で立ち上げた「ちょっと待てヤイ!この合併ネットワーク」主催によるものです。
講演会のはじまる5分前まで10人を数えるほどの参加者しかいなくドキドキしたのですが、110人(新聞発表)ほどの参加がありました。
講演をお聞きしてやはり今一番大切なのは、この町をどんな町にするんだと言う町づくりについて考える事だと改めて考えさせられました。
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・市町村の大きさはどう言う風に考えるべきものか?
住民が責任を持てる範囲。責任を持つと言うのはどう言うことか?『村八分』と言う言葉からも分かるように、日本の社会の中で地域の共同体の基本にあったのは最低限『お葬式』と『火事』であった。
地域社会で運営できる責任の持てる範囲、地方自治はそこからすべて始まる。
一人一人がどう考えているかを問われている住民投票はとても大切。
市町村は大きくする事も小さくする事もできる。
分割ー自治体を廃止して分割する。
分立ーある地域の人たちが別の自治体として独立できる。
合体ー対等合併と言うもの
編入ー吸収合併と言うもの
一人一人がこの大きさでいいのかを詰めて考えなでればいけない。
たとえば目の見えない人が安心して歩ける道路がどのくらいあるだろうか?目の見えない人も一人の住民として、町の一員として責任を果たさなければならない。
自由に歩ける道路もないのにその人たちはどうやって活動する事が出来るのだろうか?
目の見えない人は保護されているだけではない。一人一人の責任を果たそうとしている。
関東一円の視覚障害者に「視覚障害者と都市計画」と言うタイトルでアンケートをとったことがある。その中の項目に「鉄道のホームから転倒した経験があるかどうか?」と言うものがあったが、転落の経験ありと言う視覚障害者が62.5%に及んだ。
大多数の目の見える人たちは自分の事だとは思っていない。それで町の中で一緒住んでいると言えるのだろうか?
これから高齢者が増える社会の中で、そう言う人たちが一緒に暮らしていける社会、誰もが生きていて良かったと思える社会を作る事が大切。
市町村は何のためにあるのだろうか?
地方自治法第1条の2「地方自治体は住民の福祉の増進を図る事を基本として、地域における行政を自主的活総合的に実施する役割を広く担うのもとする」とある。
憲法、地方自治法、さまざまな法律を含めて「地方自治体は何のためにあるのか?」を書いてあるのはここの部分だけ。
富士見町は何のためにあるのかと言うと、「住民の福祉の増進を図るため」にある。
それは「『すべての住民の幸福』が自治体の目的でそれ以外はない」と言うこと。
日本中の合併協議会でそう言う角度で今合併を検討しているところは一つもない。おかしくありませんか?
「市町村合併の必要性」と言われるものについて
①地方分権の推進のために合併は必要か
「人口規模が小さいと能力が低いので合併をして人口規模を大きくして能力を高めてから権限を渡したい。」と中央政府は言っている。
人口規模が小さいと能力が低いのか?
長野県の売木村人口規模は720人。720人の村で役場主催で合併推進派と慎重派の学者を呼んで住民に公平な資料を提供するために討論会を主催した。その会に180人の参加者があった。
その後で村の居酒屋で課長さんが「自分の給料が半分になっても村の名前が消えるよりもいい」とおっしゃった。
みんなで力を合わせる村のあり方の方が まともな地方自治だと思いませんか?
愛知県の富山村204人の村。その村政要覧の村長さんの挨拶には「我が村は日本一小さなミニ村である事に誇りを抱き・・・」とある。
この村の姉妹都市はアメリカのケンタッキー州のある町で村の中学生の修学旅行はケンタッキー。
権利ばかりを要求しない。誰かに任せるのではなく、自分たちが責任を持ってやる本当の地方自治の姿がそこにある。
北海道の真狩村、人口2500人北海道にはもっとも優れた村立の農業高校がある。
一学年40人、3学年120人の子供たちが学んでいる。
曰く、「私たちの村は21世紀も22世紀の農業でやって行きます。その農業の担い手を自らの手で育てるべし。それがこの村の生き方」
この農業高校を卒業してもこの村で農業をやらないかもしれない。或いは会社勤めをするかもしれない。でも
「どこで農業をやっても日本の農業にとって担い手を育てる事は大きな意味がある。仮に会社に務めるようなことがあっても 今、日本にとって正しく農業を理解する人が増える事がこの国にとって必要だと確信を持っている。」
北大の農学部と提携してその土地にあった農作物の研究を高校生がやっている。
腰が引けてない。正面から打って出ている。
人口規模が小さいと本当に駄目なのか?
しかし現実問題としてこの考え方は力を持っている。
たとえば「町」が「市」になると「昇格した」と言う。変じゃないか?
②広域的な行政需要のために合併は必要か
先ほど目の見えない人のお話をしましたね。
③少子・高齢化に対応するために合併は必要か
日本で高齢者が増えてきたことは世界に誇れることのはず。
これからの課題は高齢者が「生きていて良かった」「富士見に住んでいて良かった」と思えるようにするにはどうしたらいいか?
高齢者が増えた事を「問題だ」と言うのは筋が違う。
問題は子供が減って来た事。なぜ子供を生まなくなったのか?
ここ5年~10年ほどの理由はリストラや失業におびえていて子供を生んでも末来に展望が持てない。
しかしここ10年~20年の理由は何か?「子育ての不安。子供をきちんと育てられるか分からない」から
子育ての不安をもっとも端的に表しているのが児童虐待。
厚生労働省に寄せられた相談が
1994年は1961件
2000年には17700件
その中で実母34.2%。実父が22%
その背景にあるのは子育てを相談する相手がいない。血縁関係があてにならなくなった、ことにある。
地域社会が人間関係を弱めてしまった。兄弟が11人、従兄弟が40人もいた時代は相談できる相手がそばにいた。
醤油やお米を貸し借りできる時代はどこのうちの子も我が子のように叱った。子供の集団があった。
現在の子供たちは、歴史上一番小さい人間関係しか与えられていない。
地域社会に力のあった時代は集団的認識を持つ機会がいくらでもあった。
本当に高齢者対策、少子化対策を考える気があるのなら、合併をして都市化を進めるのは愚かな事。
地域の小さな単位の人間関係を豊かのものに作り変える努力を今しなければならない。
財政危機と市町村合併
1)市町村の規模と財政危機は無関係。
現在の財政危機の基本的な原因は
①長期的な経済不況による税収入の落ち込み
②無謀な公共事業計画の実施による国債、地方債の膨大な累積
今の財政危機は市町村の規模が小さいからではない。だったら合併しても財政危機なおらない。頭痛の時に虫下しを飲むようなもの。
2)地方財政の困難の根本原因は地域産業・地域経済の衰退
①農林水産業の衰退と食料自給率の極端な低下
日本の食糧自給率の中で穀物自給率を見ると先進国サミットの参加7カ国(ロシアをのぞく)の中で100%でないのはイタリアと日本だけ。
しかもイタリアは97%、日本は27%
②地域経済に対する大企業支配と地域商工業の衰退
大きな企業で買い物をすればその利益は企業に行き、地元には落ちない。皆さんの着ている物は地元で買ったものですか?
たとえばイタリアでパーティを開いた時に出てくるもの物は全部地元のもの。
自分の町の物を使おう。
米どころの地域の学校の給食がパンなのはおかしい。
公立の建物をなんで鉄筋で建てるのか?日本の地元の木造建築は優秀じゃないですか!
私たちの行き方を見直さなければいけない。
自動車も同じ。今日本では7500万台の自動車が走っている。その車にタイヤが3億本。そのタイヤが3年に一回づつ取り替えられている。毎年1億本のタイヤをごみになっている。
私たちの暮らしは変じゃないですか?
3)市町村合併は財政危機克服にはならない
①職員の定数削減は町村地域の雇用力を落とし、地域経済をさらに衰退させる。
人口1万人以下の町村で役場は確実に一番大きな雇用力を持っている。若者の働く場もなくなる。財政力と言うのはどれだけの税金を払う能力があるかと言うこと。
②やっていけないから合併する。
つまり貧乏だから合併すると言っている。貧乏+貧乏+貧乏+・・・は貧乏連合
③面積の拡大による行財政の不合理化と住民サービスの低下
4)現在計画されている通りのパターンで全国すべての地域で合併しても国・地方の財政危機は解決しない。
今のパターンで全部が合併しても節約できるのはおよそ5兆円。この5兆円のお金を節約して700兆円の借金を返すのに140年かかる。
市町村合併が財政再建の道を開くというのは夢のまた夢の話。
質問
Q:合併しなかった時に他の市町村の事業の計画さまざまな決定権をもつことができるか?
A:たとえば川の事を考えれば物凄く大きな町にならなければならない。それは県・国の仕事。県の仕事に参加すると言う考え方。広域行政、或いは一部事務組合という制度がある。
Q:政権が変ったら合併はどうなるのだろうか?
A:民主党中心の政権に変ったとしても合併や道州制制に関しては積極推進である。
Q:日本の経済を活性化させるにはどうすればいいのか?
A:それぞれの国の国内総生産(GTP)、207ヶ国を世界銀行が計算している。世界の経済の規模はおおよそ一年間で総額30兆ドル
アメリカ 30% 9兆ドル 1215兆円
日本 15%
ドイツ 7~8%
フランス 5%
イギリス 5%
この5ヶ国で62%
日本国民の個人貯蓄は1400兆円。これはアメリカの一年の経済力に匹敵する。。
何でそんなに貯蓄を持っているのか?
どこに貯蓄しているのか?
通貨性預金(財布代わり) 11%
定期預金
生命保険 32%
株式
経済で回るのは11%だけ。
一体なんで貯金をするのか?
いざと言う時のために備えている。
*一番の不安は1.自分の病気
2.老後の生活
3.家族の病気
4.今後の収入資産
5.家族の進学、就職、結婚 上位3位は社会保障
スエーデン人は年金制度が確立しているので貯金はしない。
高等学校で授業料をとっているのは先進国では日本だけ。発展途上国を含め、すでに110カ国は授業料は無料。国公立の大学で授業料を取っているのも日本だけ。
社会保障制度を確立すれば貯金の理由がなくなる。
世界の最高の額の個人貯蓄は憲法に反して社会保障制度をきちっと確立してこなかったから。本当の豊かさがない。
安心してお金を使えれば 1400兆円の経済循環が起こる。
具体的に中小企業の事を考えればよく分かる。町の中でお金を使わなければ町の商店はもたない。
地方自治体のやる仕事を励ましあいながら「寝たきりになっても大丈夫」「おかあさんがんがれ」とみんなでやる様な事があるならば貯金は必要ですか?
私も社会的な力を出そうという流れになっていくはず。
理想的なことを言っているようだが、40年50年前の日本にはお金がなくっても子供をたくさん育てられる環境があった。
それは「人間関係」というかけがえのない財産があったから。
地域社会とは何か?地方自治とは何か?
誰もが明るく安心して暮らせる町を作ることが一番大切。
先日旅行に行ってきたイタリアではいたる所、町々、家々に虹の旗が掲げられていた。イタリアで虹は平和のシンボル。
その旗はイラク戦争に反対するために掲げられている。
「平和がなければ私たちはない。」「平和のない教育はない」と、学校の意思で虹の旗を掲げている。
イタリアの政権はイラク戦争を賛成している。
しかし地方自治体は自分の意思で自己決定して自分たちの方向を決める。学校も学校で自己決定する。
ゆっくりでいいので本当に正しいと考える道を考えるべき。
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先生に「そうじゃぁ ありませんか? みなさん?」
と、問いかけられると思わず「その通りです」と返事をしたくなります。
お話がお上手だと思ったら、劇の脚本を書いたりもなさっていたようです。
講演の後先生の宿泊先にお邪魔してお話を伺う機会がありました。
各地を回られた折のお話などを本当に楽しく聞かせていただきました。
その中で印象に残ったのは幼稚園の話です。
いい養育を受けている保育園・幼稚園で子供たちに夢を語らせると「あれがしたい! これがしたい!」になるけれど、駄目な養育をしている保育園・幼稚園では『あれが欲しい! これが欲しい!」になるのだそうです。
そしてご自身で作詞なさった歌をご披露してくださいました。「・・この町が好き・・」
翌朝、お帰りになる先生に駅までご一緒したのですが、電車を待つわずかな時間にも宗教、文学、教育など、さまざまな分野に話が広がり、本当に知識の豊富な方だと感心いたしました。
先生とお話していて出た結論は、何やカンや言ってもこうしていろいろな方と知り合う機会を与えてくれて、今回のこの合併の話も「ありがとう」って事でした。